育毛という名の呪縛

いつから人間は育毛にいそしむようになったのでしょうか?

薄毛やはげてしまうことへの恐怖におびえ、毎日鏡で確認。無理矢理横から持ってきて、不思議な髪型になってしまったり、かつらをかぶることでようやく安心できるという事態になってはいないでしょうか。

今回は薄毛に対しての考え方がいつ頃日本で定着し、対策をとるようになったのか、まずはその歴史をひもといてみましょう。

1.育毛の歴史

日本人は一体いつ頃から薄毛を恥ずかしいものと認識し始めたのでしょうか。

古くは中世の頃から薄毛に対して劣等感をいだき、カツラを着け初めていたことがわかっています。しかしそのほとんどが上流階級の人の話でした。これが江戸時代に入ると平和な世となり、庶民のなかでも美意識が芽生え始めてきます。19世紀初頭の文献では柑橘系の植物エキスを抽出した、毛生え薬というものが登場し、それなりの効果を得ていたようです。これはまさに元祖育毛剤でしょうか。

また女性の黒髪は美しさの象徴でもあったため、薄毛の女性は特に悩んでいたようです。それにしても、自然体ではいられない価値観が、こんなに古くからあったのだと痛感させられます。


2.なぜ薄毛になるのか?


では次になぜ薄毛になってしまうのか、その原因をいくつか紹介します。

(1)脂っこい食事を多くとることで毛根に皮脂がつまり、髪の毛の成長を妨げて抜けてしまう場合。

(2)生活習慣や強いストレスの影響で血行不良になってしまい、抜け毛が増えてしまう場合。

これらは髪の毛の成長を妨げる、アルコールやたばこなどの生活習慣を見直し血行を良くすることや、睡眠不足、ストレスを軽減することで薄毛が改善されることがあります。

しかし日本人の男性に最も多いのが、AGAと呼ばれている男性型脱毛症です。

(3)ホルモンという内分泌系の異常で起こってしまう場合。

この薄毛のメカニズムは男性ホルモンであるテストステロンが、毛根付近に存在する5αリダクターゼと結びつき、悪玉ホルモンと呼ばれているジヒドロテストステロンに変換されます。これが毛母細胞の受容体と結合すると、なんと!「成長しないで抜けてしまえ」という命令をしてしまうのです。

そしてこの命令により髪の毛は抜け落ち、次に生えてきても産毛のような弱い髪の毛にしか育たなくなってしまうという訳です。これが世間で恐れられているAGAの正体です。

更に薄毛やはげは遺伝すると言われているように、悪玉ホルモンを作り出す5αダクターゼの量の多さが、悲しいことに、遺伝してしまうのです。

3.AGA治療

現在はウイッグや増毛技術、育毛剤が多く開発され、様々な対策をとることができますが、なかでもAGAは病院での治療が必要とされています。医師によるカウンセリング、診察、血液検査により治療方針を決め、内服薬を処方してもらいます。また成長因子投与治療というのを、進行状態に合わせて取り入れていきます。治療費は病院にもよりますが、診察だけで10000円弱。お薬代が1か月分で7000~20000万円弱かかります。これを毎月受診して、5年、10年と続けて進行を遅らせるのです。

このように薄毛治療には根気と、高額な治療費が必要だということが理解できるでしょう。


(まとめ)

いかがだったでしょうか。薄毛を恥ずかしいと人類が感じた時から、この育毛の呪縛は始まっています。

このような小さい価値観の中に生きなければならない薄毛やはげの人々が、本当にかわいそうになってきます。もっと世界を見て下さい。欧米人のスキンヘッド率の高いこと。薄毛やはげを嘆くのではなく、それもファッションの一部として取り入れていく勇気が、これからは必要です。そしてそれを受け入れるおおらかな価値観を、周りが生み出すべきなのではないでしょうか。